通信くさぶえ 993号

野菜の「初物」、「旬」、「なごり」について

 8月に入り、お盆が近づいてきました。くさぶえ農園は、標高千メートルに近い高冷地に位置していて、お盆頃になると急に秋の空気に変わってきます。今年は季節の移り代わりが少し早いようで、日中の厳しい暑さが続いていますが、夜は涼しくなってきていて、秋の気配を感じるようになってきています。

 野菜たちもその変化を敏感に感じているようで、キュウリやズッキーニはまだ頑張っていますが、勢いが落ちてきて、曲がったものや尻太りのものが混じってきています。インゲン類も豆が目立つようなかたいものも混じってきました。

 古くから日本では、同じ食べ物でもその食べ物のとれた時期や状態などにより、「初物」、「旬」、「なごり」と呼び方を区別して使い分けていたそうです。

 野菜について考えてみますと、種を播いて育ててきた野菜が大きくなり、収穫時期を迎えて最初にとれ始めたものが「初物」です。まだまだ収穫量も少なく、味もこれからピークを迎えるといった感じですが、ようやく迎えた収穫期を喜びます。そして、収穫の最盛期を迎えて、その野菜の「旬」となります。収穫量も増え、味ものってきて、その野菜の美味しさを存分に楽しむことが出来ます。次第に生育後期になっていき、収穫量も減り、形が不揃いになってきて、味も次第に落ちていきますが、その野菜を「なごり」と呼んで最後まで楽しみます。

 現在は、スーパーなどで野菜を買うことが一般的になり、「旬」の状態のものだけが並ぶようになりました。しかし、野菜を育てていると「旬」の時期はとても短いことがよく分かります。そして、「初物」を味わう喜びや、「なごり」を楽しむことがとても大切なことであることに気付かされます。これらの言葉は、食べ物を育てながら大切に食べてきた日本人の生活から生まれてきたものだ、と思います。

 くさぶえ農園では、「旬」の野菜だけでなく、「初物」や「なごり」のものもお届けさせていただきます。「なごり」のキュウリやズッキーニ、インゲン類なども状態を見ながらお届けしますので、いろいろな顔を持つ野菜をそれぞれ楽しんで味わっていただけたら、とても嬉しいです。

ニンジンが発芽してきました!

 冬の間お届けするニンジンが発芽してきました。ニンジンは早めに播くと、ニンジン黒葉枯病が発生することが多く、かといって遅播きすると、冬の寒さが来る前に根の肥大が間にあいません。そのため、毎年7月後半に一気に播種するのですが、この時期は干ばつになることも多く、発芽には土壌の水分状態が非常に重要なので、毎年苦労しています。

 今年は播種したその日に強い雨が降り、播種した土の表面がかたく締まってしまいました。ニンジンはかたい土を押し上げて発芽する力が弱いため、その後かん水を繰り返して土が緩むように試みました。そして、どれぐらい発芽するのか、不安に思いながら発芽を待ちました。

 播種後5日めからポツポツと発芽し始めてきて、なんとか一斉に発芽してきてくれました。とりあえず、ひと安心です。今シーズンも美味しいニンジンをお届け出来るように、これからの管理作業を頑張りたいと思います。

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