通信くさぶえ 916号

「つるし雲」という雲が現れると・・・

 新規就農したばかりの頃、部落の最長老に「南の空にこういう雲が現れると、2、3日後に雨が降る」と教わりました。

 このおじいちゃんは戦時中を満州で過ごし、帰国してからこの長者原を開墾して畑にしてきた一人です。抱えきれないほどの太さのカラマツを切り倒し、根っこを掘り起こし、大きな石を掘り起こして開墾したそうです。まだ重機などなく、牛や馬も使ったそうですが、ほとんど人力で行ったと聞いています。当時の貴重な資料には、人よりも大きな石を沢山掘り起こした写真が載っていました。最初は水道も電気もなく、横穴を掘って住居としていたこともあったそうです。このおじいちゃんたちのおかげで、長者原は今では高原野菜の産地となりました。僕もここで農業をやらせていただいています。

 雲の話に戻りますが、教わったような雲が農園の南の空、八ヶ岳の西側に現れると、数日後に、もう少し先になることもありますが、確かに天気が崩れてきます。今ではテレビやインターネットで天気予報について情報を得ることが出来ますが、畑から雲の動きを見て、この先の天気を読み取る知恵に敬服します。

 この特徴のある雲について前から通信に書きたいと思っていたのですが、先日インターネットの天気予報サイトの記事を見ていて、ようやくこの雲の名前を知ることが出来ました。

 この雲の名前は、「つるし雲」と言います。この滑らかな円形の不思議な雲は、高い山の風下に浮かぶ雲のことを言います。上空の風に乗って流れる普通の雲と違い、一度出現すると場所がほとんど動かないため、高い山から「吊されて」いるように見えるので、「つるし雲」と呼ばれているそうです。農園からは八ヶ岳に吊るされているように見えるということです。

 「つるし雲」は、「レンズ雲」と呼ばれる種類の雲の一種で、「上空の風が強い」、「湿った空気が存在する」という状況下で発生しやすくなります。上空の強い風が高い山を越えたり回り込んだりする時に、風下側で空気の波が起こり、風が上昇している部分で雲が出来るそうです。

 時間が経過しても空気の波の形状は急には変化せず、風が上昇する場所で雲が出来て、風が下降する場所では雲が消えていくという現象を絶え間なく繰り返すことによって、同じ場所で雲が止まって見えるという訳です。

 農園から見える不思議な雲がいつも同じ位置に現れる理由がようやく分かりました。「つるし雲」が見えると天気が下り坂に向かうことがあると言われるのも、ぴったりと当てはまります。

 昔からの知恵と科学的な知識とが合致して、自分としてはとても納得のいく出来事でした。

news916

アンケートありがとうございました。

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