今回はすみません、いつもの通信とは違います。
僕が農業研修をさせていただき、新規就農してからもお世話になってきた、農業の師匠が亡くなりました。
この地域で有機農業を最初に始めた一人です。この方がいなかったら、おそらく僕は就農していなかったし、農業は憧れでしかなかったかもしれません。
慣行農業から有機農業に切り替えて、周りの農家からはほとんど気ちがいのように思われていたくらい、有機農業への理解がない中で、ゼロから有機農業を始めた一人ではないでしょうか。
僕が新規就農する頃には、有機農業も随分と市民権を得てきていましたし、栽培技術などもかなり蓄積されてきていました。師匠のようにはとてもじゃないけど、自分には出来ないな、と感じていました。
師匠の所には、信州大学の学生時代に何回か畑にお邪魔させていただきました。僕は卒業後、東京で就職をしましたが、出来れば農業に携わりたいなという想いはありました。
そんな中、師匠に「うちに来て手伝ってくれないか」というお話をいただき、この機会を逃したら、きっと農業は出来ないだろうな、と思い、会社を辞めて、師匠の所で2年間研修させていただき、就農しました。
当時は今のように国や県、市町村が新規就農を支援してくれるような制度もありませんでしたが、今では県の里親制度が出来たり、国などの新規就農者への支援が行われるようになってきたりして、師匠のもとには様々な人が研修をして、新規就農する人も増えていきました。若い人が好きで、大好きなお酒を一緒に飲んだり、得意の蕎麦打ちを披露したり、この地域に移り住んだ人達を暖かく見守られていました。口下手で多くを語りませんが、「観光客は何日かで帰ってしまうけど、ここに住んでもらうと365日いてもらえる」と言っていたのが印象的でした。
最後に病院で会った時に、今年育てているゴボウなどが入院してしまってもうだめだ、と残念がっていました。最後まで畑に行きたかったんだろうな、と思います。
この地に根ざして生きてきた方が、また一人いなくなりました。僕もこの地に住んで20年以上になりますが、お世話になった方々が少しずついなくなり始めています。師匠だけでなく、ここで生きてきた人達は最後の最後まで、身体が動く間は畑に出ています。その生き方を心から尊敬しますし、素敵だなと思います。自分もそうありたいです。
師匠と同じようにはいきませんが、ここで自分なりの農業をしながら生きていけたら、とても幸せなことだと改めて思いました。
樹々が色付き始めてきました。
朝晩は少しずつ冷え込んできました。24日(金)には初霜が降りました。
畑の周りの樹々が少しずつ色が変わってきています。晴れた日にはどこを見ても綺麗な景色が広がるようになってきました。この景色を見ながら、寒い冬が来る前に農作業を進めていきたいと思います。

